
書き起こし版「人を大切にする経営とは1(後半)」坂本光司さん
過去に放送された番組の書き起こし版です。この回の前半についてはこちらをご覧くださいませ。またラジオの音源はこちらでお聴きいただけます。
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宮田:お送りした曲は、サイモンとガーファンクル「コンドルは飛んでいく」でした。
壹岐敬のいきいきラジオ「未来への種まき」。えー今日は、人を大切にする経営学会・会長、坂本光司さんをお招きしてお話を伺っております。ご紹介をさせていただいている、この「人を大切にする経営学会」こちらがどういったものなのか・・?
壹岐:この本の中にも書いてあるんですけど、注目すべきなのは、多数派の言動や確立された学理論ではなくて、奇人変人、異端、と呼ばれる個人や企業の言動、非常識、異端とさえ言われる学理論であることがわかる。と。
これ多分今年書かれた本なんですけど、これは多分先生が学者人生を始められた30数年前から自分が異端だと思ってた訳じゃないと思うんですけど、仮に異端と思われようが正しいことは言い続けたいというか。
坂本:あのね、公務員の昔ね、十何年ですか。その時に、いろんな中小企業の方が相談に来られるわけですよ。私は、一所懸命、親切丁寧に困っている人がいたら何か助けてあげようという気持ちは、まぁ親の影響もありましたけど、ずっとありました。そういう相談者が夕方の5時過ぎでも並んでいるわけですが、役所の上司は「もう5時だから明日にしてもらえる?」と言えというわけです。しかしですね、「先方は、明日明後日落とす手形が落ちなくて困っているみたいだから、何としても今日中に相談に乗ってあげないとだめじゃないですか。」と言うと、「いやそんなことしたら他の職員が帰れないんだから帰ってもらえ」と、こんなことを言われてね。その時には引き下がりましたけど、だんだん噂が広がって、そういった相談に来る人が増えていって、最後はやっぱし職場じゃまずいと思って、喫茶店で5時以降相談を受けていたら、経営者と一緒にお茶飲んでる姿を上司が見たんでしょうね。なんかお客さんの奢りで飲食してるというようなね。そんなことを言われたりしたこともありますけど。でもさっき言った、何が正しいか何が正しくないかですよね。まあ利他というかね。他人の利益というか。自分の利益じゃなくてね。相手が困ってるんだから、こっちは困ってないんだから。特に公務員ですから困ってる人たちのために存在するというのが本来の公務員の使命ですからね。
壹岐:坂本先生は、僕も本当にそう思うんだけど、自分の学者としての名声を高めたいとかね、本を売りたいとか、まして教授になりたいとか、まぁ結果的になってるけども、そんな目的で論文書いたりとか、授業されてた訳ではないと思うんですよ。
坂本:多分ね、日本の大学の特に経営とか商学の先生で一番たくさん本を書いてると思うんですよ。100数十冊書いてますから。なぜそんなに多いかと言うと一年にだいたい2冊から3冊書いてるからですよね。
教授になると本を書いても評価されませんから書きませんよね。別にいるだけでいいわけですから。講師とか准教授とかという方々は、本を書けば、その研究実績が評価されて昇進しますけど、教授になるとそうじゃないもんだから書かない。しかし、私は学生たちにも企業にも創造的な企業になりなさい。創造的な人間になりなさい。新しい価値は自分で作りなさいと。松明は自分の手でと。新しい価値を自らの手で生み出しなさいと。こういって教育をしている人間が、人が書いたテキストとかね、自分自身が全く創造的な活動をしてないというわけにはいかないから・・・。創造的な活動をしていることの証明としてね、本を書かないと、私が学生だったらその人の言うことを聞くかなぁと思いますよね。先生は、かっこいいこと言ってるけど、自分は何もしてないじゃないかなんて。これじゃあ、説得力がないと思って、毎年数冊は書いているわけです。
壹岐:坂本先生の専門が、大きく言うと二つおありになると思うんですけど。中小企業経営論というのと、地域産業論。で、僕は個人的にはこの地域産業論の先生の話はものすごく面白いんですけど、これ全くウケないんですよね。ものすごい統計数字に基づいて先生が話されて、時々この学会とか講演会で、繁栄論みたいな話をされると、みんなね、ええ今日は中小企業の経営者の話じゃないんですかみたいな。そんな感じですよね。あれでもすっごい面白いです。
坂本:結構ね、各地域、地域の産業の歴史っていうかね。昔は地場産業って言ったんですけど、そういう話って随分、全国30ぐらい詳しくしててね。昔大学でそういう講義を担当していたものですから。例えば静岡から、浜松なんか有名なのはオートバイとか楽器だとかね、そういうのが有名じゃないですか。なぜ浜松で楽器産業が生まれたとか、なぜオートバイ産業が生まれたとか。こういう話って全国どこにでもありますよ。新潟県にいけば、精密部品工場がなぜあるかとか、倉敷には紡績業がなぜあるかとかね。そこにいろんな人が登場するっていうね、そういう話が私も好きだしね。でも中小企業の人たちそういう地域産業の話に興味ないですよね・・
壹岐:まれにされるんですよね。すっごく面白いですよ。ところが他の人たちはなんか肩透かしにあったような坂本先生の涙が出るようないい話が聞きたかったのに、今日はわからない統計的な数字の話だったとかね。
でまぁ話がちょっと逸れましたけど、そういう異端の経営者。であったということなんですが、今日ちょっと面白い本持って参りました。
2018年の、8月号。宮田さん、タイトルになんて書いてありますか?ハーバードビジネスレビュー?要するにハーバードのビジネススクールの論文を集めた本ですね。これは?その本の表紙になんて書いてありますか?
宮田:「従業員満足は戦略である。」
壹岐:「良い職場が競争力を生む。」「現場を大切にする会社が最後に勝つ。」とかね。「最高のおもてなしは従業員満足から生まれる。」とか、書いてありますよね。これはですねぇ、異端が異端でなくなった瞬間ですよ。私に言わせると。さっき先生のここに書かれてた通りのことが起きたんですねえ。「やがてはまるで蜜に蟻が集まってくるように異端なものが時代の常識理論となっていく」ってね。30年前は異端の静岡の変わった経営学者が言ってたことが、ハーバードビジネスレビューが、これが最先端だと言い始めたんです。30年後に。すごくないですか!
坂本:この本は私も見てますけどね、胸に詰まる思いがやっぱりありましたよね。これが2年前でしょ?あわせてね、2019年の8月に、とんでもないレポートがまた発表されているんですよ。アメリカから。ビジネスラウンドテーブルといいまして、日本で言うと経団連みたいなところですよね。アメリカの誰もが知っているような会社の社長さんが全部名を連ねているような経済団体ですよ。ビジネスラウンドテーブルといいますけどね。そこが一年の研究成果を発表したんですよ昨年の8月に。
その時にね、やっぱり同じような、ハーバードビジネスレビューと同じように、私たちは株主に、少し加担しすぎていたと。1番大切な人々のことを忘れていたと。もっとこれからは、具体的には社員だとか、あるいは取引先だとか、地域社会だとかですよね。で株主は5番目に入ってたんですよ。これ私自身が本の中で提唱しているね、5人は全く同じで、順番が違うのは私の経営学は顧客第一じゃなくて社員第一ですから、顧客は3番目ですから、このアメリカのビジネスラウンドテーブルは、1番は顧客で2番に社員、3番は仕入れ先。4番目が地域社会、5番目が株主ですから。1番と2番が違うだけでね。その日の夕方から夜にかけて私の自宅のパソコンだとか電話が鳴り響いたんですよね。先生とうとうやりましたねと。先生バックで関係したんですかと聞かれましたが、全然関係してないですよね。
宮田:時代がそれに気付いてきたってことですよね。
坂本:それは私が言ったものじゃなくてね、世の中ようやく正しい方向に、自然な方向に 変わってきてるのかなーといって嬉しかったですけどね。
壹岐:それを受けて、じゃあ日本の経済雑誌や新聞が、「いよいよ坂本先生のおっしゃってたことが欧米でも主流になりましたね」と言うかと言うと、それは言わない。絶対に言わない。「ハーバードがそういう風ことを言ってる」とは少し言ってるけど、実際は、ほとんどスルーです。これ以降ね、僕はずっとハーバードの雑誌なんかけっこう読んでますけど、完全にこの論調一色なんですよ。要するに、この「人を大切にする経営学会」で提唱しているような論調と、ハーバードビジネスレビューで言ったりすることは、最近ほとんど変わらないんですけど、相変わらず日本の大学はスルーです。競争理論の方をやはりメインにしている。ところが、番組の冒頭で先生がおっしゃってたように、韓国とか中国の経営者、台湾、東南アジア、ベトナムの経営者なんかの方が、どっちが正しい経営かがわかっていて、日本の有名な大学には学びに行かない。有名大学だとか、日本の大企業の経営戦略に学びに行かずに、坂本先生のところに来るというのはそういうことなんです。彼らの方が、ちゃんとこれから何が正しいかということが見えている。
これは問題だと思ってですね、ここがね、僕は「100年企業を考える」未来への種まきというテーマを、この番組につけさせていただいた最大の理由は実はここなんです。100年企業を考えるんだったら、今最もしなきゃいけない未来への種まきは、まず経営者が、自分の信念として、この正しい経営とは何かということをどっかの本に書いてあったとか誰が言ったとかじゃなくて本当に自分の信念として何を持つかだろうと。ということで少しでもこの場を借りて坂本先生から教えていただいたことを広げていきたい、伝えていきたいなと。
実際、私も、本当にいろんなことを先生に教えていただいて、その内容を10年社長として実践して、絶対に正しいとやっと言い切れるようになりました。10年たって成果がでて、まぁ最近セリオも立派な・・もう本社ビルにしても、あんな立派な建物ができたらねえ、株も全部オーナーから買い取らせていただいて、MEBOもできて、社員のお給料もだいぶ上がったり、そういうのを見てると、本当にこれは正しい。という会社の一員になれたかなという気がしてる。
坂本:よくね、今壹岐さんおっしゃったような話っていろんな経営者から聞くんですよね。先生、あなたが提唱されている人を大切にする経営。お天道様に顔向けできる経営、神様から御褒美もらえるような経営。それは間違ってない。正しいってことを我が社は証明してますからっていってね。
壹岐さんのような方がどんどん増えているという。日本には何百万という会社があるもんだから何千社あったって何%にも満たないと思いますけども。でも私はずーっと一つ一つじっと観察してますけど、間違いなく増えてきているし、また、将来多数派にならなければこの国はもたないというか、生まれた人々が幸せを実感できないような社会を私たち大人が残していいのかということですよね。私たちのためにじゃなくて私たちの子供とか孫とかその方々が、先人たちはいい歴史を残してくれたと。
いいことやってくれたというですね、そういうことするのが、100年企業の話がさっき出ましたけどね、明日とか明後日じゃなくてそういうことを想定していきながら舵取りをしていく。
さっきおっしゃった学会も、今から7、8年前に作ってそれが目的なんですよ。なんかね、人を大切にする経営というものをもうちょっと広めたい。それからもうちょっと深めたい。二つの意味があって。で、仲間と相談をして、作り上げて、壹岐さんにも常任理事かになってもらって、学会員が今1200人ぐらいですか。ただ残念なのは学者先生が100人くらいなんですね。普通の学会っていうと会員の90%は大学の先生方なんですよね。あとコンサルタントとか士業の方が少しいますけど。私が会長やらせていただいているこの学会は圧倒的な経営者の方とか、士業の方が多いと。学者が非常に少ないというね。なぜ少ないかっていうのは今までの話でお分かりでしょうけど。それは困るからですよね。自らを否定されちゃうから。今までやってきたことを否定されちゃうからですよね。
宮田:・・と言う部分もありまして、また次回もですね、この人を大切にする経営学会について詳しくお話を伺っていこうと思うんですが、今日のところはお時間ということで。
壹岐:はい、ありがとうございました。
~CM~