幸福に働く ラグーナ出版 森越まやさん 川畑善博さん

ラジオ書き起こし版の第3弾は、2022年6月と7月に放送されたラグーナ出版ご出演の回(3回分)をお送りします。過去の書き起こし版は第1弾の1(前半)第2弾の1(前半)をご覧ください。

今回は放送第1回目の後半部分をお送りします。

森越:その当時はまだホームページも作っていない会社でした。ホームページもないんだなぁっておっしゃりながら、ご本に掲載していただいたんですね。

壹岐:しかし、よくそれで出版社が成り立ちましたですね。

川畑:私自身が以前出版関係の仕事をやっていて、その後、精神科病院で働き始めたんですけど、だから何をやるかっていった時、みんなが川畑さんって、前出版社で働いてたよっていうことで、なんというか自然の流れでみんなが書いた文章を持ってきて読むようになって、そして本作りを初めてっていうことなので、これだったら経営がうまくいくっていって出版を始めたわけではないんです。

で、やっぱり病院の中にいると亡くなっていく方もたくさんいらっしゃいまして、そういった方が亡くなったときに残るものっていうと、やっぱり言葉しかほんとに残らないのですね。で、そういう言葉を拾って本にできないかというのがスタートでした。

当時はまだ偏見も強い時代でしたから、新聞とかでも、精神科の悪いニュースは必ず採り上げられていたんですけど、良いニュースというのはなかなかなかったんですね。だから精神科からも良いニュースが出るようにしようってことで始めたので、経営的に売上げがあがるかどうかというような事業の始めではなかったので・・。

壹岐:まぁ聞いてらっしゃる方は、何の話をしているのかちょっと分からないところがあると思うんですけど、ラグーナ出版さんの設立の経緯をおしえていただいているわけですけど、その精神科の病院というのは、森越先生が勤務医をなさってらっしゃった。そこで川畑社長も働いていらっしゃったわけですが・・どういうお仕事だったんですか?

川畑:最初は看護助手っていう立場で入ったんですけど、途中で資格を取ってケースワーカーですね。精神保健福祉士っていう役割ですけど。入院してる患者さんと地域を繋げるというような、そういう相談をする仕事です。

壹岐:そこで、ほんとに偶然、お二人は出会われたわけですよね。

川畑:そうですね。森越が2005年に鹿児島に帰ってきたのかな。

壹岐:その前は、イタリアにいらっしゃったんですよね。

森越:はい、イタリアに少しいて、2005年に帰ってきました。

川畑:その時にちょうど、文章がいろんな人から集まってきたので、それを読んでたら、森越が「何読んでんの?」みたいな話をしてきて・・本を作ろうかと。

壹岐:基本的なことなのですが、統合失調症の方というのは、もともと生まれついて知的な障害をもっていたというわけではないんですよね。

森越:統合失調症は人生の途中から始まる病気なので、思春期だとか、まぁ若い方も多いですね。よく、精神科の病気は命には関係ないって思われるかもしれませんけど、命に関わるような大変な苦難の多い病気だと思っています。

とにかく、日本の精神医療は、今入院用に33万床のベッドがあって、入院者数は28万人とかですけど、入院期間が長いんですね。特に鹿児島では入院が長くて、何十年と続いているんです。

壹岐:入院と言っても、ストレートな言い方ではありますが、監禁というか、鉄格子の中に入れちゃうようなそんな感じ・・。

森越:ええ、昔は『収容』って言葉を使っていたくらいですから。今だいぶ制度的には整ってきていると思いますけど、まだまだ入院の大変さはあると思います。

壹岐:森越先生はイギリスとかイタリアでも働いてらっしゃったということですが、あちらはやっぱり違うんですか?

森越:特に、イタリアはですね、精神科病院(入院)を法律で廃止しているんです。1978年に病院自体を閉鎖するという方向性を決めて、90年代に全ての精神科病院が閉鎖しました。

で、地域医療なんですね。地域で良くなる。地域医療に変換して、訪問だとか、保健センターみたいなところがあって、一時的な入院は総合病院の中の精神科の病棟があって、2、3週間、ほんとにちょっとの間だけ入院って形があるんですけど、その他はもう地域に帰ってグループホームだったり、一人暮らしだったり。すべて地域医療ですね。

壹岐:それで社会的な混乱とかは起きてないんですか。

森越:はい、それで40何年を経て。

壹岐:それはその地域に信仰深い方ばかり住んでいたとかそういう特殊な事情があるわけでもなんでもないんですよね。

森越:今はイタリア国中で、同じ制度のもとでそうなっています。地域差があるというのは本当に問題なんですけど、病院のない精神医療が当たり前になっています。

壹岐:なんかちょっと不思議な気がするんですよね。日本って世界的に見てこんなに良い国はない。みんなが親切で、みんなが優しくて争い事は好まないし、治安もいいしって。だから当然精神病の方に対しても、イタリアのような感じになってるイメージがあるんですけど、こと精神医療に関してはそうじゃないということなんですか。こんなことを質問するのが失礼かもしれないですけど・・。

森越:精神医療でまずよく言われる問題は、イタリアはもとよりヨーロッパの多くの国は、医療が公的機関なんですね。警察や消防と同じように、医療も絶対に必要なものであって公的に担う。だから医者はみんな公務員なんです。プライベートな病院もあるにはあるんですけど、ほぼ公的な病院ですね。で、日本は90%超えて精神科病院については民間がやっているので、そこで経営的なことがあるっていうのはよく言われることなんですけど、病院経営云々の前に、人として精神病の方々とどう向き合うべきかとか、どういう人生を彼らが社会の中で送っていくべきかとか、そういう理念の違いというものはすごく感じます。

壹岐:言葉は選ばないといけないかもしれないけど、日本は、ある意味後進国なんですね。

森越:あ、とっても後進国だと思います。世界中の精神科のベッドの5分の1が日本にあるって言われるぐらいですから。

壹岐:世界中の精神科のベッドの5分の1が日本にある!?違う意味で先進国かもしれないけど逆から見たら大変な・・。その数字はちょっとビックリですね。

森越:今日は、ちょっときちんとしたデータは持って来なかったんですけど。

壹岐:いえいえ。まぁそんな中で、細々とではあるけれども、お二人は志を持たれたわけですね。なんとか、そういう方たちが働く場を作れないかと・・。

森越:最初から、こういうことをやりたいと計画をしたわけではなくて、目の前にいる人の言葉を届けたいと思ったんですね。精神的に行き詰って、生きるか死ぬかっていう体験を潜り抜けてきた人の言葉っていうのは、生きていくのにとても励まされる言葉なので、病院で働きながらも私たちが助けられてきていたので、そういう言葉を伝えたいってことがありました。

そこでまず仕事になるかとか、そんなこと全然考えずに、とにかくこう言葉を届けたいってことを思っていました。

壹岐:それで出版社を立ち上げた・・?

川畑:今の話の続きになりますが、私も精神科病院の前は東京の小さい出版社にいまして、帰ってきてそういう病院に勤務したら、やっぱり社会の常識っていうのがあるんですけど、最初びっくりしたんですね。やっぱり病室に鍵がかかっているし、あといろんな管理があって、びっくりして。

じゃあ精神科の治療ってなんだろうってことを本当に考えまして、症状を一つ一つ丁寧に追うと、暮らしの中で行き詰まった部分が症状として現れるわけで、症状をきちんと治すってことであれば暮らし方であったり働き方であったり、そういったところに手助けをしない限りは治らないと思ったんです。

じゃあそれをやるとしたら、病院の中では病院の環境に適応できるだけなので、そうじゃなくてやっぱり地域の中でやるべきだろうけど、例えばすごくしんどい働き方をしてたらそれを変えないといけないし、暮らし方、家族関係もありますよね。そういったことが苦しければそこで手助けしない限りは、本当の意味で治療とは言えないんじゃないかなっていう疑問はずっと持っていました。

で、みんなで雑誌を作ろうということになった時に座談会をよくやったんです。当時は長期入院の人と、簡易入院で、すぐ出しますよというような人に大きく分かれていたんですけど、出てもすぐ戻ってくるんです。そういう人がなんで戻ってくるのかなぁって思って、聞いてみたら、やっぱり居場所がないっておっしゃるんですね。

家があっても居場所がない方が、それはたくさんいらっしゃって、特に社会的な居場所としては、やはり働く場所が重要になってくるっていうようなことになって、そしたら、森越の後押しというか励ましで、本作りでも始めて、本ができて、書店に行ったらいい本だねっていう風に言われるようになるといいねということで・・。

壹岐:原点はやっぱりその森越さんの「言葉を届けたい」っていう本当にそれだけの思い。その言葉を読んで、同じ苦しみを持ってる人たちが救われるんじゃないか、勇気づけられるんじゃないか、だからこれをそういう人たちに届けたいということですよね。だからそれを自分たちで書籍化しようと会社を立ち上げたわけですね。

森越:書くことで病の体験を力に変えていこうと、書く側としてはそういう思いがありました。書くことで、自分の力になっていく種まきのような。それをまた受け取った人にとっても、とても励まされる言葉が多いと思っています。

壹岐:本当にだから、全く小難しい理論はなかったわけですよね。そういう意味ではすごい話だなぁと思いますね・・。

森越:ある患者さんから、障害があっても、不幸ではないということを言われた時、「僕は障害があるかもしれないけども、不幸ではありません」と言われて・・

本当にこう、自分の身の回りには、そういう方でも幸福に暮らしている人がたくさんいて、こういうことこそ伝えていきたいなと思いました。

壹岐:すごい話だなぁ。

宮田:はい。今日はですね、株式会社ラグーナ出版・代表取締役会長、森越まやさん。そして代表取締役社長、川畑善博さんにお話を聞きましたが、壹岐さん次回もお二人にお話を引き続き聞いていきますので。

壹岐:はい、深いお話をうかがいたいと思います。

宮田:お二人ともどうぞ引き続き、よろしくお願いいたします。

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