コアコンピタンスの前提にあるもの 坂本光司さん

ラジオ書き起こし版の第2弾、今回も坂本先生がゲストです。3回に分けてお送りした回の第2回目の後半部分をお送りします。

このシリーズについては当サイトのカテゴリ「新・生壹岐ですが」に分類してしておりますのでこちらをご覧くださいませ。またこの回のラジオ音源はこちらでお聴きいただけます。

坂本:私はね、よく取引先とか仕入れ業者とか外注さんとか悪い言葉で下請け企業とかいろんな言い方がありますけどね、彼らのことをね、本の中でそういう風に書かずに社外社員という言葉を使ったんですよ。我が社の社員じゃないけど社員と同じようなことをしてくれているんじゃないかと。仕事を出してあげているとか、コストとして見るのは間違いだと。たまたま外にいる社員という評価位置付けをして経営をしなさいと。彼らに対して暖かくあれ、彼らを大切にしなさいということですよね。良い会社はそうしてるんですよ。

壹岐:まぁ最近はね、下請けさんなんて言うとこなくて、パートナー企業さんとか言ってたり。でもそれがね、本当にパートナーなのか、呼び方だけパートナーなのかっていうことはあるよね。

坂本:自分の会社は在庫、倉庫がなくてね、取引先だけあるっていうのは私に言わせますと果たして大切にしているかどうかっていうのはいっぱいありますよね。

壹岐:だから、普通だったら仕入れたいものをなるべく在庫持ちたくないじゃない。そうすると困るだろうからといって、もう要らんものでも普段から持っていていようっていう会社があるんですよ。業者に急に言っても持ってくるのが大変だろうから。そこまで徹底するんですかって?って思いたくなるよね。

宮田:常に在庫を抱えている状態ってことですか?

壹岐:そうそう。下請けさんというか取引先さん、パートナーさんが、困らないような状況にしようと。彼らに無理難題を言いたくないから。それから値決めもね、本来だったらこっちが一方的に決めれば良いのに、向こうのことをずっと考えて、それじゃあ安いだろうとかいう会社がいっぱいあるんです。

坂本:この前ね、ある県のある会社、従業員300人の会社に遊びにきてくれっていうから行ったら、どっちかというと、そこは部品を作ってる会社、アッセンブルメーカーですよ。それで、1日何回ぐらい取引先に納品してるのって聞いたら、8回行ってるっていうんですよ。1日8回。納める商品は全部違うの?といったら、いや同じだと。向こうの効率を上げるためだっていんううだけど、1回でいいじゃないかと。

日に8回も規模の小さい会社に持って来いという、そんな冗談みたいな話があるんですよ。小さな会社ですから、元々人手不足だし、社員一人当たりの負荷が上がっちゃってる会社に対して、何度も納品に行けば、また一人いなくなっちゃうし、1日1回でいいよって、そういう会社もあると思えば、そうじゃない会社もあるというね。

壹岐:要するに、そういう会社は、無駄なコストだから切り捨てようじゃなくて、どうしたら外注先との取引が長続きするか、だから大事にしようという発想なんですよ。そういうことを考えてると、お互いの関係が良くなるから、そういうことをやり続けないといけないっていう発想ね。無駄じゃなくて1番大事なことですよ。無駄でも何でもない。だからね、大きな会社がやっているからと言って、あんまり見ただけを真似しないほうがいい。そうするととんでもないことになって、やがて潰れてしまうと思います。

宮田:あり方がわかってないとやり方だけ真似してもってことですよね。

壹岐:「もう価格で闘わない」に出てる会社に、私も坂本先生にくっついて行って、何社も知ってるんですけどもうちょっとね、常識の逆、経営のセオリーの逆ばっかり、とまでは言わないけど、かなり逆をやってる。逆にこそ強みがあるというか、長続きする元があるみたいなね。

坂本:ビニール傘の会社もあったじゃない。普通ビニール傘ってキオスクかなんかで買えば500円だとかね。すぐに逆さになっちゃって使えなくなっちゃうんだけど。1本1万円とか2万円とかね。中には10万とか70万とかね。別にダイヤモンドをつけてるわけじゃないですよ。それだけ機能がいいっていうかね。それでもって商売してる会社もあって、高いから値引きしろっていうのは無いですよ。

壹岐:決して出てくる会社が突拍子もない特許を持ってるとか、そういう会社じゃないのよ。タオルだったり、シャツだったり、別に特殊な製法とか特殊な素材を作ってるからそんな特殊なことができるっていうことではなくて、それの例えば1番なのがスーパーマーケットがあるんですけど。この本には出てないけど仙台の方のスーパーマーケット。主力商品おはぎなんですよね。

坂本:おはぎっていうかぼたもちっていうかね。それがいつ行ったって列なしちゃってるし、午後行くとほとんど棚になくなっちゃって。

壹岐:それがまた辺鄙なところにあるのよ。でもパパママストアでね、ちっちゃい店なんですよね。古い・・よろず屋さんみたいな。

坂本:スーパーマーケットっていうのは基本的には仕入れが多いはずですけど、そこは、ほとんど自分たちが手作りで作ってるし、そのうちの一つが今壹岐さんおっしゃったおはぎなんですよ。それが1年やそこら売れてるんだったらね、テレビで流したとかラジオで流したとかっていうんでしょうけど、その状況が40年50年続いてるんですよ。毎日ずっとですよ。それは安いとかなんかじゃなくてね、まぁ値段もそんなにしませんけど、やはりおいしい。本当においしい。100人に聞いたら100人おいしいと言うと思いますよ。絶妙な味。

壹岐:でね、本当に不思議なんだけれども、周りに大手スーパーとか、まぁ仙台にあるスーパーマーケットなんだけど、過疎地にあるんですよ。過疎地というかちょっとね、周りにショッピングモールとかがあって、そういう昔からあったお店は全部潰れちゃってるの。ところがそこは、大手のスーパーができればできるほど、来店客が増えていく。

宮田:へええ。どういう仕組みなんでしょうか。

壹岐:要するに、大手のスーパーができて遠くからみんなが車で来て、せっかくここまで来たらあそこのおはぎ買って帰ろうとかいってすごい来て、もう駐車場が足りなくなるとかそんな話ですよね。

坂本:仙台の駅から30分ぐらいいくと思うんですね。山の中腹みたいなところに決してロケーションがいいとかって言えないんだけども。よく中小企業でロケーションの悪さを口実に我が社のダメさを嘆く会社があるけども、あんた間違ってると。この会社に学べって言って、よく取り上げる会社がこの会社なんですけど。

値段は、別にね、おはぎがひとつ500円600円にしたってお客さん減らないと思うんですけど、そこそこ利益が上がってますからこれで十分ですといってね。どこでも買えるようなお値段でやってるんだけど、実際の付加価値はそれより数倍ある。それはね、親切丁寧みたいなこともともかくですけどやっぱり味ですよ。その味に到達するまで随分と時間かけて、朝2時かそこらに女将さん起きられてね、支度をされて、全部機械を使わずに手作りでその味を出すまでにどのくらいあんこを捨てたか分かりませんって私に言ってくれましたけどね。それほど命懸けというかね。そこまでの努力を多くの中小企業がやってるかどうかですよ。

壹岐:その会社にとってみるとそれが商品開発だし、本当にもうコアコンピタンスってよく言うんだけど、強み中の強み。で、それを従業員の人たちがおんなじ気持ちになって、最初奥様が一人でやってたんだけど社員の人というか一緒のパートの女性とか皆さんがおんなじ気持ちで作ってくれる。じゃ、それっておんなじ気持ちで作りなさいって言って命令して作るわけじゃないじゃないですか。そういう風土を作るってことですよね。

坂本:過疎地域ですからね、けっこう一人暮らしとかね、高齢者夫婦世帯とかね、お年の方が多いんですよ。その方々がそこに来て午前中だけとか午後だけとか四時間だけとかいってね、機械は会社の中に入っても一切ない、全部手作りでね・・。手作りの味って本当にね。

壹岐:スーパーマーケットであって別に和菓子屋さんじゃないんだけどね。売上の多分6割ぐらいがお惣菜なんですよ。で、ロス率がゼロなんだって。売れ残りがないから、別に低価格で、「もう価格で闘わない」って、高価格で売ってるわけじゃないんですよそこなんか。低価格で売ってるんだけど、材料もいいの使ってるから原価率も高いんですよ。でも売れ残りがないし、仕入れロスがないから、利益率が抜群に高いんです。

このビジネスモデルで僕がとっても驚いたのが、台湾の小籠包屋さんが全く同じことをやってましたね。先生は本当に海外にもお顔が広くて、台湾に行ったときに、そこの会社の社長さんが、すっごいデータ全部見せてくれましたよね。1番驚いたのがFL比率っていうのがあって、食べ物屋さんでその「フード」と「ロス」の比率ですよね。それをどうやって減らすかっていうのが飲食店の常識、鉄則なんですよ。ところがそうじゃなくて原価率と人件費を何%以下にしちゃいけないっていうルールを作ってるんですね。その小籠包屋さん。あれには、びっくりしましたですね。

坂本:その会社はね、今は台湾どころか世界で最も評価されている中華料理屋さんですけどね。特に有名なのが小籠包ですね。台湾の有名な会社の経営者は高学歴のエリートって呼ばれる人が多いんですけどね、この方は決してそうじゃないんですよね。非常にやっぱりご苦労されて、涙流しながら今日まできて。だから弱い人とか社員とかのことがよくわかるみたいでね。だからやっぱり本物を作らなきゃいかん。社員に嘘つかせるようなものづくりをさせちゃいかんということでね、小籠包はあちこちあるけど、私もいろいろ食べ比べをしたことあるけど、なんでこんなに違うんだろうというのはね、現場見せてもらうと社員の目つきも顔つきも違うしね、基本的にはやっぱり機械を使わずに手作りなんですね。

壹岐:機械が全くないのよ。大量に作ってるのに。本当に。で、社員は疲れたらすぐ休めて、そこに目の不自由な方がいらっしゃったりしてマッサージとかしてるんですよね。

坂本:私は障がい者雇用をしてない会社はダメだってよく言うんですけど。この今言った小籠包を作ってる会社はね、手作りだから疲れるじゃないですか、肩凝って。そしたら休憩時間であろうが仕事中であろうが体を休めにいきなさいと。休憩室があちこちにあって、椅子があってそこで休むんだけど、いっぱい白衣を着たマッサージさんがいるの。この方々外注さんですかって誰か質問したんですよ。そしたら違います社員ですっていうんですよ。それでほとんど全員が視覚障害者、目の見えない人ですよ。身体障害者の皆さんは不便だけど、その中でもいちばんご苦労をされる方って、正直目が見えないほど不便なことはないってぐらいでね。就職だけでも難しいんですよ。この方たちをね、あなたの仕事は小籠包を作ることじゃありませんと。小籠包を作っている社員たちの疲れを癒してあげるのがあなた方の仕事ですといってね。あなた方の特技を生かしてくださいといって。それで何十人も雇用されてね。疲れた小籠包作る社員の肩揉みをする。送迎はどうするかっていったら、タクシーで視覚障害者の方々は送迎してるって言ってましたね。これが、一流の会社ですよ。名前を言えばすぐわかる会社なんだけど。世界中の人が知ってる料理店です。だから伸びてるんですよ、あの会社は。

壹岐:そこを訪問した時、データを全部見せてあげるよって言われたんで僕はこういう性格なんで、かなり極秘資料を見せていただいたんだけど、日本の外食チェーンさんがやってらっしゃる管理手法の全部逆なんですよ。だからもうリピーターが多くて、お客さんが多くて、完売しちゃうんですよ。だから利益率は高い。

坂本:社員は辞めないしね。

壹岐:社員の定着率はものすごく高いし。その小籠包作るとかね、親子何代で働いてたりするわけ。

坂本:だから人を大切にする経営ってのが日本的経営っていうのはちょっとおこがましいですよね。そんなのはもう台湾にも中国にもタイにもベトナムにもある。アメリカも一緒ですよ。

壹岐:共通しているのは、皆さん坂本先生のファンでね。本当。皆さん嘘みたいだけど台湾とかいって坂本先生の本を擦り切れるほど読んでてね、先生がたまたま訪ねて行ったら涙流して喜ぶ人とかいるのよ。感激しました。僕なんかが。

宮田:国内だけではなく海外でも・・。

壹岐:いやぁ、もしかしたら海外の方が評価高いですよ!

坂本:そんなことないけど。

宮田:今回もいろいろとお話を聞いてまいりましたが、次回も坂本先生にお話を聞いてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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