書き起こし版「人を大切にする経営とは3(後半)」坂本光司さん

これまでの放送から好評だった回、保存版ともいえる回を書き起こしています。このシリーズについては当サイトのカテゴリ「新・生壹岐ですが」に分類してしておりますのでこちらをご覧くださいませ。またこの回のラジオ音源はこちらでお聴きいただけます。

壹岐:そこがまぁ100年企業を目指すならば、ということですね。そういう前提ならば、そういう未来への種まきを今しましょう、というのがこの番組の趣旨なんだけど。

坂本:未来に向かっての種まきの話でいうと、会社を伸ばすっていうことは、人を伸ばすっていうことですよね。

会社というのは、個々人の社員の集合体です。だから、個々の社員が成長しなければ会社は成長しないんです。これが本当は原理原則ですよ。しかし、意外なことに、会社は成長しているように見えるけど、社員が意外と成長していないことがあります。

要するにギャップがあるわけですよね。そのギャップが何かというと、私の公式では、それはバブルだということです。社員が成長していないのに会社が成長しているように見えるのは、膨張しているに過ぎない。しかし、膨張と成長は違います。

そういう会社は、どこかで、必ず、社員に無理をさせてますよ。未来への種まきってのはね、具体的には、会社を成長させようと思えば、まず社員を育て、成長させる努力をしないといけませんよね。そのためには、育てるような仕事を取り込まないといけないし、そういう環境を作らないといけない。お金とか時間もかかりますよね。もし優秀な社員を育てたいっていうんだったら、やっぱり教育をすごく大切にすべきですね。

もちろん仕事を通じた教育が1番大事ですけどもね。社員が大学院に行きたいとか、講演会に行きたいとか、ちょっと値段は高いけどこういう本を読みたいって言う時にね、お金を使える処置をしてあげてるっていう会社がね、教育に熱心な会社でしょうね。社員が勉強しようという気持ちのある会社がやっぱりいい会社ですよ。

私は今まで8000社くらいみてますけどね、そこから行き着いた結論は、会社は人生最後の大学(院)だということです。大学や大学院が最後の学校だと思ったら大間違いで、そこから社会に出てからは職場が大学院ですよね。

そこでは死ぬまで続くわけですから、一生勉強です。

生涯勉強し続けるという覚悟が必要です。

それを失ったら生ける屍というか、老害と呼ばれることになりますからね。

いろんな会社に行くとね、ちょっとアドバイスをしてくれって時にね、例えば決算書を見させていただいて、例えば利益率が30%とか40%とか高い会社があるとすると、普通、それは凄いですねと、超超優良企業じゃないですかとそう言う風に言いたいんでしょうけど、私はそうは言わないんです。この利益率は少し高過ぎますと。社員の給料は業界の平均以下じゃないですかと。利益を下げてでも、社員の給料を上げてあげなさいと。あるいはですね、利益が20%30%の会社にお伺いして、社員の給料はそこそこ高いとします。次には、外注さん、協力会社の方々の利益率はどのくらいですかって私聞くんですよね。そうするとせいぜい2、3%じゃないかってことがあるわけです。発注者、仕事出す方が30%も40%も利益を出していて、外注先として、あなたの代わりにあなたがやりたくない仕事、やらない仕事をやってくださってる方々の利益率が2、3%というのはやはりこれは異常ではないですかと。自分の会社の利益を20%に下げてでもいいから、利益を還元して、協力会社にも10%、20%の利益を出せるようにしなさいと、そんなことを言うと、この人何言ってんのかと・・。

利益率だけ見れば「いい会社」かもしれないけど、私に言わせれば、そうは言えませんね。あと、社長の給料が高い会社がいい会社かっていうと、私の考えではそうじゃありません。社長の給料があんまり高い会社に対しては、痛烈に批判するんですよ。あなたの給料を下げなさいといってね。

私は「五方良し」の経営学を展開していますから。

三方良しじゃなくて五方良し。会社も良し、それから社員も幸せを感じて、取引先も幸せと感じて、地域社会も幸せって感じて、お客さんも幸せって感じて。最後に株主も幸せを感じて、5人が幸せになる経営が一言でいうと、今回この番組の趣旨でもあるけど、人を大切にする会社、100年会社を続けたいと思ったら、こういう経営をすべきですよ。

人を大切にする会社でおかしくなった会社って歴史上存在しないんですよね。そういう事実があるんだからそうした方がいいですよ。

ところが、経営者が経営学を学んで、なんか頭でっかちというか、知識ばっかり大きくなってしまって、評論家のようになっちゃって、それは難しい、だからやれないって言い始めるわけですね。

しかし、経営学っていうのは、学ぶことでも知ることでもなくて実践することですからね。経済学は知ればいいんでしょうけど、経営学はやっぱり学んだ知見を実践することです。

社会のため、世のため人のために実践するっていうのが経営学ですからね。なんかその辺がね、知識格差じゃなくて実践力格差がね、最近、やるかやらないかの格差が大きいような感じがしますよね。

壹岐:そういう問題意識を持ち、一種の危機意識を感じ、それを自分が何とかしなきゃいけないという責任感だとか、当事者意識が社長さんなり、経営幹部の方に芽生えた上で読んだら、坂本先生のご著書には「やり方」についてもきめ細かく書かれているんです。

ところが、そういう問題意識に目覚めてない「常識的な」問題意識をお持ちの方にとっては、先生の本は、もうなんかはぐらかされているような感じがするわけですよね。この坂本さんというのは何を言ってるんだ。なんかいろいろ変な文句を言って、要は障がい者を雇えば会社が良くなるのかとかね。本当にそういう方も多いんですよ。何?福利厚生費を?利益の何%出せばいいんですか先生?とかね。そうすると業績上がるんですかとかね。本当にそういう風にしか見ない方も結構いらっしゃって残念です。

もう一つね、坂本先生の経営学で、僕が凄くその通りだなと思ったことがあります。それは競争戦略に関することです。大企業経営については銀行時代から様々な競争戦略だとかをやってきて実践もしてきたんですけど、中小企業の経営については、やっぱり大企業の延長線上に考えていたんですね。

それに対して一喝を与えてくださったのが、中小企業がやってはいけない3つの競争、と。3つあるんですけども、1つが価格競争。2番目が成長競争。3番目が社員間の業績競争。

特に僕のいた大銀行なんてのは社員間の業績競争の塊みたいなところでね。半沢直樹なんてまさにその典型で、競争が物凄かったです。それからライバル会社との規模とか成長の競争。前年比いくら伸ばすかとか。これも凄かった。これが「常識」だと思ってた。それと価格競争。これも「常識」だと思ってた。これが「異常が長く続くと異常があたかも・・」の典型なんですよ。

僕が頭をぶん殴られて、「常識」を真逆にしなきゃいけないなと思ったのはこの三つですね。これはね、そう思えば、社長の努力というか考え方である程度はできる。会社を変えようと思ったらできる。でも社員がやりたくない、できないって言ったらできない。僕は、両方実体験しました。社員がやりたい、できると思ってくれたらできましたが、無理ですって思い込んでる、社員が固定観念になってるところは無理でしたね。社員がその気になってくれないとできない。これ両方経験しました。でもこの中で一つだけ絶対にやめることができるのは、社員間の業績競争。これはできる。

坂本:これを書くときに色々考えてんですけど、会社とか経営ってのは、スポーツで言うと団体戦、チーム戦なんですよ。しかし残念ながら多くの経営者は、団体戦、チーム戦じゃなくて個人戦だと思ってるんですよ。

会社の中で、本来家族である社員の方々に、さっき言ったように業績競争、売上高競争をさせてね、そのお二人に対して、勝ち組と負け組という札をつけてしまって、その方々が同じ釜の飯を食べますかと。たまたまその方々が親友同士であった場合ね、勝ち組と負け組に分けられてしまって、勝った方はともかく負けた方はね、親友関係って維持できないと思うんですよ。

もっと言うと、たまたま勝った人がね、負けた人に「次は勝てよ」って言って自分の持ってるノウハウを全部教えないと思うんですよ。教えたら次に自分が勝ち組になれないから。

私はそういう例えでね、会社は、柔道とか空手とか相撲とか、これ全部個人戦ですよねーそうじゃないと。個人戦だと、全て勝った方負けた方に責任が問われるわけですけども、野球とかバレーだとかフットボールとかね、全て団体戦じゃないですか。例え勝っても負けてもね、個人が責められるってことはないわけじゃないですか。例えば勝った方が補欠であろうが、三振した人であろうがみんなが万歳三唱で皆さんが美酒に酔いしれると。負けた時は次は頑張ろうといって。それが本当の経営というものですよ。

私はね、たまたま坊さんじゃないですから、念じて考えたわけじゃなくてね、お陰様で8000社を超える会社を回ってきたら、100年も続いている会社、あるいは100年も続くと思われる会社というのは、三つの競争をやってないということに気がついてね。それ以外の会社の方々は気がつかなかったんでしょうね。

私は横糸を引いたってだけですけど。その中で、最もやっちゃいかん競争、絶対にやっちゃいかん競争が、今、壹岐さんおっしゃった社員間の業績競争ですよ。社員同士の個人的な成長競争はいいんですよ。しかし、ノルマを課したような業績競争をさせたらそれは会社グシャグシャになってしまいますよ。意外とこれ勘違いしている、会社ってのは個人戦の塊だみたいな人が今でも多いじゃないですか。

もう一つの重要な問題というのは、価格競争ですよ。価格競争が多くの社員とか企業そのものを苦しめてる。価格競争している限りは100年続かないと思いますよ。それはいつも勝った負けただから。私に言わせると喧嘩ビジネスだから。どんどん奈落の底に向かっていきますよ。

宮田:両方共倒れってパターンももちろんありますよね・・

坂本:どうすりゃいいかっていうヒントもその中にね。

壹岐:僕も最初はどうやったらいいか全くわからなかったんだけど、坂本先生のおっしゃるいい会社を社員と一緒にたくさん見に行く中で、社員が分かってくれるようになった。それはやっぱり社長の考え方だけではなかなかできないです。社員が本気でそれになりたいと思わないとできない。

価格競争のとこだけはね、自分で創業した人はできますよ。最初からそれやればいいんだから。でもそうでない会社を作り直す時には、社員というか本当に会社の空気っていうかね。哲学を変えないと。非価格競争に行くって言うベクトルを作れば時間が経つとやがてできていくと思うけど。

ただ、その考え方なんですけども、日本の学校というのは、例えばテストでもみんな個人戦じゃないですか。例えば皆さんが高校でも中学でもいいけど班の合計の点数でテストの結果を比べたことってあります?ないですよね。僕が聞いた話だとアメリカの学校とか班全員の点数で競わせるらしいんですよ。そうするとね、100点取った子と、30点取った子で、できる子はどうやって30点の子に点を取らせるかって、一所懸命教えるらしいんですよ。自分だけがやったって全体では勝てないじゃないですか。チーム戦ですから。向こうの小説かなんか読んでた時に、アメリカの子供の野球試合とかで、全員絶対出させなきゃいけないとかね。「12番目の天使」って本にそう書いてあって、なんかおかしいなと思ったんだけど要するにへたっぴな子もどうやってその子がちょっとでも活躍するともう1番ホームランバッターの子がすっごい褒めるんです。お前がいてくれるから俺たちも頑張れるんだみたいな。これ言ってみれば、坂本先生がおっしゃっている障がい者雇用とかそういうところにも繋がっていく話だと思うんですよ。優劣つけたらハナからそんなもの決まってるじゃない。

坂本:たまたまね、今の話聞いていて、岡山にもいい幼稚園とか保育園とかいっぱいあると思うんですけど、私も全国の保育園幼稚園の調査研究をしたことがありますけどね、たぶん間違いなく日本一だっていう幼稚園が神奈川県の川崎にあるんですよね。

壹岐:川崎市の僕の自宅のすく近くなんですけど。

坂本:園児が1300人ぐらいでね、そのうちの300人が目が見えない子とか耳が聞こえないとか、足が不自由だとか障がい児なんですね。300人ですよ。だからそういう人数的にも日本一ですけど、そこがいつも10月に運動会をやるんですよ。運動会といったら運動神経のいい男の子女の子が選ばれて運動場回るっていうのでしょうけどね、そこはクラス全員が出るんですよ。300人も障がい児がいますから、障がい児がいないクラスはないわけですよ。だから四周差がついちゃうこともあるんだけども。それを親御さんやらなんか、何千人の方が見てるんだけども涙、涙でね。そういう全員が出て云々っていうね、これほど暖かい幼稚園があったのかというぐらい紹介する度皆さん驚くんですけどね・・

壹岐:すごいですよ。その幼稚園に入りたいっていって、全国から神奈川の川崎市に地方から移って来られる。

坂本:他の幼稚園保育園に入園できる子は、そっちに行ったらどうですかといってね。この子はどこの幼稚園でも認められないだろうなという子を、あえて意識的に。お母さん方にしてみれば本当に天国みたいなところでしょうけどね。やっぱりそれが評価されているんですよ。で『日本でいちばん大切にしたい会社大賞』でもね、表彰して。この幼稚園を表彰せずして一体どこを表彰するんだって議論になってね。

壹岐:そうでしたね。最初、坂本先生はなんで幼稚園を表彰するんだろうと思って。みんなで見学に行ったんですよ。そうしたら本当に、感動を超えてましたね。やっぱりあの園長先生と園長先生の奥さんもちょっと常人じゃできないですよ。僕なんか絶対無理。

坂本:本当に心優しい人ばっかりでしたね・・

~CM~

宮田:壹岐敬のいきいきラジオ「未来への種まき」。えー今回は、3回に渡って、人を大切にする経営学会・会長の坂本光司先生にお話を聞いてまいりました。壱岐さん、どうでしょうか3回を振り返って・・

壹岐:はい。もう・・恩師というかですね、直接月謝払って学んだことはないんだけども、恩人でもある坂本先生にこうやって遠方からお越しいただいて本当にありがとうございました。

坂本:こちらこそ、楽しかったです。

壱岐:やっぱり世の中で、経営に、特にこのコロナの中で困っている経営者の方たくさんいらっしゃると思うんですね。で経営者の方も困ってるし、それよりも、その会社の方もとっても色々未来が見えなくて、困ってらっしゃる、苦しんでらっしゃる方多いと思います。そういった方々に、坂本先生のこういったご著書とかに取り組んでいただくことによって、希望が見えていく。100年続く未来への種まきの一助となればと思っております。本当に先生ありがとうございました。

坂本:こちらこそありがとうございました。

宮田:ありがとうございました。

壹岐敬のいきいきラジオ「未来への種まき」は、毎月第二・第四日曜日、午後3時からお送りしています。次回の放送は、12月27日・日曜、午後3時からです。今回は、人を大切にする経営学会・会長の坂本光司さん、そしてお相手は、壹岐敬さん。アシスタントは、レディオモモ・みやたさとみでした。ありがとうございました。

坂本・壹岐:ありがとうございました。

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