さらば価格競争 坂本光司さん


第2弾の書き起こし版、今回も坂本先生がゲストです。3回に分けてお送りした回の第2回目の前半部分をお送りします。

このシリーズについては当サイトのカテゴリ「新・生壹岐ですが」に分類してしておりますのでこちらをご覧くださいませ。またこの回のラジオ音源はこちらでお聴きいただけます。

♪~

宮田:壹岐敬のイキイキラジオ「未来への種まき」。今日は前回に引き続き、「人を大切にする経営学会」会長、坂本光司先生をゲストにお話をお聞きします。坂本先生、よろしくお願いします。

坂本:こちらこそお願いします。

宮田:さぁ前回は、このコロナ禍においてもいろいろな企業を訪問してこられた坂本先生のお話を聞いてまいりましたが・・

壹岐:前回申し上げたのが、坂本先生がずっと提唱されてる、「人を大切にする経営学」っていうことなんだけど、要するに社員を幸せにすることを目的とした経営学を実践すれば、お金儲けはそれについてくるものだというような考え方ですけどね。

それが、もしかしたらコロナの中で如実に顕在化するというか、ちょっと嫌な言い方だけど、むしろコロナがリトマス試験紙のような感じで、意外と経営の試しだったような感じもありますね。むしろ「人を大切にする経営」をやってたらビクともしないというかブレないという気がすごくする。ブレなさ感がものすごく感じるんですね。たとえ一時的に業績が悪化しても、経営方針が全然ブレないから、そういう会社では、そりゃあ一時的にはそういうこともあるよと、でもそれは全然問題ないよと、そういう感じがするんですけどいかがですかね。

坂本:「人を大切にする会社」の社長さんとかリーダーの人ってのは、やっぱり超長期のスタンスで今日を見ているじゃないですか。だから一時的にアゲインストのことがあったって、そんなものは折り込み済みというかね。あって当然でしょという感じですね。

しかし多くのブレまくってるような会社っていうのは、モノの見方が超長期のスタンスがなくて、すごく短期的なんですよね。今日、儲かるか損するかといったようなね。その視点で判断するから、将来大きなビジネスになるにも関わらず、短期で見ちゃうから見えないということがありますね。

人材の教育も同じじゃないですか。人材の育成のための教育をしてね、今日採用した人が明日戦力にはならないじゃないですか。少なくとも半年とか1年とか、場合によっては2年もかかるわけじゃないですか。だから立派な会社ってのは、将来のことを考えて、そういった方を採用して一生懸命教育訓練するわけですよ。でも今いったブレまくってる会社っていうのはそれが面倒臭いから、すべて中途採用にしちゃうとかね。

壹岐:そういう会社の特徴といか、この表現が悪いとは言わないんですけど、よく言うのが「即戦力になってほしい」と。でも、新入社員が、即、戦力になんかなるはずがないんですよ。逆に即戦力になったら怖いわ。だって昨日来た人がいきなり活躍できるとか、そんなことないじゃないですか。何年もかけて、種撒いてやっと花開くっていう、やっぱり自分がそれをやってもらって成長したから若い人が入ってきても彼らも長いことかけて育てようねって、自分もやってもらったから。大事なのは、この連鎖があるかどうかですよね、多分。

坂本:私が思うにね、会社の成長ってのは、個々の社員の成長が、トータルとして会社の成長でしてね。社員の成長なくして会社の成長はあり得ないと。

もし社員が5%の成長をしたとしたならば、会社が5%成長するのは当然じゃないですか。もし社員が5%しか成長しなくて、会社が10%成長したら、10-5で5%はバブルであるか、あるいは一人一人の社員に無理を課していると。だからそういうことは長続きしないと。

社員の成長の総和が会社の成長ですよといってね。個人の成長なくして会社の成長なしというのはね、私8000社ほど見てきた中でのね。だからまるで最後の学校のような、大学のような感じ。非常にやっぱり教育に力を入れている。それはやっぱりコロナ云々の話じゃないですよ。ずっとその積み重ねが出ているということじゃないかと思いますけどね。

壹岐:話は変わりますが、やはりコロナの影響で、坂本先生はあまり会社訪問ができなくなってしまったそうで、その間本をいっぱい書いたんですよね。家にこもって。

坂本:溜まりに溜まった本をね、これ幸いに。だから私にとってコロナは本を書く良いチャンスでもあって・・。

壹岐:ということで、去年から出版された本を3冊持ってきたんですけど、最初がこの「もう価格で闘わない」という本です。

坂本:それは学生さんと一緒に書いた本ですけどね。

壹岐:この本は、最初に多少解説があった後、たくさん全国の事例が紹介されていますね。僕の知ってる会社もたくさん載ってるんですけど。非価格競争を取り入れてる会社の事例で、まさにこれなんかコロナ時代にピッタリですよね。

坂本:そう、その通りでね。

壹岐:ですよね。

坂本:数年前にね、タイトルはちょっと違いますけど中身はあんまり変わらない本を書いたんですよ。正式な名前は「さらば価格競争」という題で、価格競争にさよならという本ですけどね。全然売れなかったんですよ。

壹岐:僕は、その本が大好きで、これ素晴らしい本ですねって言ってたんだけど。意外と売れなかったんですよね。

坂本:しかしある出版社が、そんなはずはない、タイミングがあるといってね、で、その権利を買って出してくれたら、今ものすごく売れてるんですよ。

壹岐:事例とかも新しくしてね。コロナの環境下だから、そういう会社が注目されたみたいな。価格競争というのは、需要の波とか、中国での生産とかそういうのにものすごく依存度が高かった。それが今使えなくなっちゃった。いろんな海外との制約があってね。そうすると非価格競争を目指していた会社が、非常に強みを発揮できてきた。

坂本:20何社紹介していますが、もしこのラジオを聞いてらっしゃる方は、機会があれば立ち読みでもしていただくといいんですけど。20数社紹介してありますので、なるほどなぁと思うような、やはりこうあるべきだというあるべき論を書いた本じゃなくて全部、今壹岐さんがおっしゃってくれたように具体例を書いてあります。

中にはね、鳥取県の万年筆を作っている会社ですけど、万年筆1本が20万とか25万とういう値段でね、1年先まで予約でいっぱいでね。しかも売上高の半分は海外向けというね。もうほんとに鳥取県にある小さな会社ですけど、そんな会社があったり、熊本県の盛高鍛冶という、家族プラスアルファでやってる包丁を作ってる会社ですけど、ほかにも草を刈る鎌とか、田んぼを耕す鍬とか。鎌もホームセンターで買えば500円か1000円でしょうけどもね、それを1万円くらいで売っててね、それが飛ぶように売れて、むしろ海外の方が評価してくれて、売上高の半分ぐらいは海外向けですね。

壹岐:いろんな業種が紹介されています。万年筆だってこれ受注生産だけど、何年先までも注文があるみたいな。

坂本:わざわざ海外から飛行機で注文にきてね、出来たら送りますか?といったらいや、取りにきますと。イギリスとかフランスの方ですよ。この世に一本しかない。

壹岐:けっこう凄いですよ。ふらここという雛人形の会社さんとかも載ってますね。雛人形って、ひな祭りの時に、年に一回しか売る機会はないじゃないですか。この会社はネット販売しかしない会社なんだけど、なんかもうネットに新商品をあげた瞬間にソールドアウトする。ということは、完全に製造数量を上回る需要が毎年決まってあるんです。3年先ぐらいのデザインまで決まっていて、要するになんでそういう仕組みにしているかというと、職人さんたちが、その年の不安定な発注だけだと安心して働けないだろうということなんですね。

坂本:そこは、季節ものの雛人形を通年生産してるの。一年間通して。

壹岐:宮田さん、すごいと思わない?要するに、ある年は、たまたま当たったから仕事があったけど、翌年はヒットしなかったから仕事が減ったということが業者さんにないように考えているんです。この会社自体は、人形のデザインと販売しかしていないんですよ。人形の製造は全部外部委託で職人さんがやっているんだけど、彼らが安心して来年分を1年通して作れるようにとしているんですね。坂本先生、例のファンヒーターの会社さんもそうだけど、すごいですよねああいう発想って。

坂本:冬しか売れないファンヒーターを作っている会社が新潟にあるんですよ。あたりまえだけど、ヒーターは、真冬にしか売れないけど、真夏にも作っているんですよ。下請け業者の方々に年によってブレまくるような発注をしたくない。そうするといい業者さんが離れちゃうじゃないですか。

壹岐:今年は暖冬だから売れないからちょっとしか発注しないとかね、そういうことがないように、それだと下請けさんが困るだろうから。

坂本:下請けさんがやめたり、職人さんがやめたりする多くの理由ってのはね、不安定、心配だからですよ。仕事があったり、なかったり。ない時はゼロだからね。ある時には徹夜しても間に合わないような。そんな生活が続いてたら嫌になっちゃいますよ。それでみなさん職人を離れてサラリーマンになるとかね。廃業したっていう会社が多いんですけど。今言った人形屋さんの会社も、ヒーターの会社もですよね。通年生産に変えてね。だからそれが取引先にとっては有難い話ですよね。だからまた再び職人さんが戻ってきたっていうんですよ。取引先を大切にする、不安定な状況にさせないっていうね、やり方の話じゃなくてあり方の方ですよね。

壹岐:何でそうするかって言ったら、社員の皆さんが自社商品を作るので完結している会社は社員だけを大切にしていればそれはなんとかなるかもしれないけど、そんな会社ないわけですよ。必ずよその会社にやっぱりお願いしているわけですね。

発注先までひっくるめた上での「人を大切にする経営」なんです。逆にいい外注先がないといいものが作れない会社っていっぱいあるわけですよね。

僕はもともと銀行員なんで、銀行員って会社のいろんなところ見るんだけど、やっぱり長期的に見ると、バーンレートって言葉知ってます?バーンっていうのは英語でまぁ会社が飛んじゃうって意味なんだけど。レートっていうのは、何年持ち堪えるかなっていう。それがバーンレートっていう。そういう考え方があるのね。もし何か突発的な事態があってこの会社にこの取引がなくなっても、一体この会社は何年持ち堪えられるだろうか。僕なんか銀行員のときに、そういう話をずっと経営者の方にしてた。もしおたくの主力商品が、売れなくなっても、持ち堪えるにはどうしたらいいかって考えましょうとかね。そのためには手金をどのぐらい持っておけばいいでしょうかとか。いろんなことを考えたんだけど。この坂本先生がご紹介してくださってる良い会社っていうのはそのバーンレートが下請けさんとか取引業者さんまで含めた意味で、何年持ち堪えれるかまで考えて経営してるのよ。すごいですよね、そういう意味では。

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