
書き起こし版「人を大切にする経営とは3(前半)」坂本光司さん
これまでの放送から好評だった回、保存版ともいえる回を書き起こしています。このシリーズについては当サイトのカテゴリ「新・生壹岐ですが」に分類してしておりますのでこちらをご覧くださいませ。またこの回のラジオ音源はこちらでお聴きいただけます。

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宮田:壹岐敬のいきいきラジオ「未来への種まき」この番組は、さまざまな企業の方をお招きし、Seeding for the future「未来への種まき ― 100年企業を考える ― 」30分です。パーソナリティーは、壹岐敬さん。アシスタントは、レディオモモ、みやたさとみです。
壹岐さん、今回もよろしくお願いします。
壹岐:はい、よろしくお願いします。
宮田:これまで2回、「人を大切にする経営学会」会長の坂本光司先生にお話を伺ってきましたが、今回は第3回目ということで。
壹岐:はい、今回が最終回になりますけども、引き続き、人を大切にする経営の真髄について語っていただきたいと思っております。
~CM~
宮田:壹岐敬のいきいきラジオ「未来への種まき」。今回も、人を大切にする経営学会・会長の坂本光司先生をお招きしてお話を聞いていきます。坂本先生、どうぞ、よろしくお願いします。
坂本:よろしくお願いします。
宮田:壹岐さん。今回シリーズ3回目、最後になりますけど・・
壹岐:前回・前々回といろいろなエピソード等を踏まえてですね、なんとなく正しい経営の「あり方」もしくは「経営の心構え」的なことを、感じ取っていただいたと思うんです。
そこで、こういう「経営の心構え」「あり方」みたいな話をしていくと、こうおっしゃる方が多いんですね。「そういう精神的な話はわかりました。では、どうしたらそういう経営ができるのですか? 人を大切にする経営の“やり方”を教えてくれませんかと」・・・。
そういう方にぜひお伝えしたい言葉があります。そして、この言葉の意味をよくよく考えていただきたいと思います。
それは、僕が坂本先生から聞いた言葉の中で、なるほど!と思った言葉です。格言みたいな言葉で、「経営者のノート」っていう先生のご著書の134ページにも書かれてもいるんですけども、こういう言葉です。
「異常が長く続くと異常があたかも正常に見え、正常があたかも異常に見える」
ちょっとなんか謎解きのような・・。最初聞いたとき、どういうこと?と思ったんですけど。
坂本:いろんな不況とか、それは経営者にとって大きな問題でしょうけどね、それが自分達のいい加減な経営がもたらした不況だということもあるわけですね。社会全体が不況なのか、あるいは自分の経営のやり方が間違っていて、わが社だけ不況になっていることもあるわけです。その峻別というか、区分けにこの言葉は使えると思うんですよね。
例えばその本の中に書いたのは、例えば熱を出したって言ってね、風邪で寝た熱については1日か2日寝てれば治るでしょうけども、でもガンにかかって出ている熱だったら、寝てたって治らないわけじゃないですか。会社で熱が出るというのは、業績が下がるということですよね。風邪を引いても熱は出るし、ガンでも熱が出ますけど、その原因は何かということですね。そこをよく見極めておかないと、まったくお門違いな治療になってしまいますよということですね。これは、私自身のいろんな経験をふまえて書いたことなんですけど、「異常が長く続くと異常があたかも正常に見える」という現象は実に怖いことですよ。
壹岐:例えば、わが社では、ずっと前からやってるから、とか、そうするのが当たり前になっているとか、常識だとか思ってる事が、実は異常がただ単に長く続いているだけだったということがあるわけですね。
たまたま時流に乗ってうまくいっていただけだったとか、たまたま環境がよかったからうまくいってただけで、本来はそうじゃなかったということです。
そこに気づくかどうかが、実はこの「やり方論」を考える上で最初に考えるべきことなんです。ここを自覚して反省できないと何にも始まらないんですよね。
前回申し上げた北海道光成舎さんの例で言うと、そこの会社では、多くの障がい者を雇用するために、通常の会社の三倍の設備投資がなされていたわけですね。それは、障がい者の方が働くために必要な設備投資だったわけです。この観点から考えると、「工場の合理化」ということは、「従業員がいきいきと働けるために行う設備投資」だということになりますね。もし、それが正しい合理化だとすれば、多くの会社で合理化のために、人を削減するとかね、そういうことをしていますが、それってもう真逆中の真逆じゃないですか。それは結局、異常なことがあたかも正常のように、長く続けてきただけなんだということであるわけです。
宮田:人を切るのが合理化なのか、人が働きやすくするのが合理化なのか・・
壹岐:もちろんね、人を切らないといけない状況になってしまうこともあるでしょう。それしか手段がないって時もあると思うんですよ。ただ、もし100年続く企業、長続きする企業を目指すんであれば、そういう異常に対して、どう備えておくかということを考えておかなきゃいけないんじゃないですかということですね。
それに対して考えるヒントを、坂本先生がいくつかおっしゃっています。例えば、今、コロナの緊急融資とかが100兆円だとか物凄い金額が出てるんだけど、お上の制度だからといって、企業も安易に無担保・無保証で借りいれたりしていますけどね。他もやってるからうちもという風になるの気持ちはわかりますよ。でも、今お客さんが減っているのは、本当にコロナ禍が終われば終わる問題なのか。それとも、もっと根本的なところにあるのかを考えないと、その先大変なことになるんじゃないかということですね。
坂本:さっきも言ったように、熱が出るという現象は同じじゃないですか。風邪でも熱は出るし、ガンが発症しても熱は出るし。現象は同じだから、勘違いしちゃうんでしょうね。調べて風邪なら風邪薬ですけど、ガンなら入院してガンを取らねばいけないですから。全く対処の仕方が違うわけですよね。その辺の勉強不足から生じる社会問題というか経営問題ってすごくあるように思いますよね。
壹岐:熱が出たときに、どういうお医者さんを選ぶかも大事ですね。コンサルタントとか会計士さんとかも、ちゃんとそれがわかる人に聞かないと、単なる現象問題の対処方法しか知らない方に聞いても、現象問題の答えしかしてくれないんですよ。
別な表現で言うと、一時的な問題と構造的な問題という表現も先生されているんだけど。それが単なる一時的な景気の動向なのか、そういったもので対応すればいいのか、それとも会社の構造自体を変えないといけない問題なのかっていうことに気づけるかどうか。わが社にとって今起きてる問題は、一時的問題なのか、構造的問題なのか。問題とは、あるべき姿と現状のギャップだとすると、そのあるべき姿自体が間違ってませんかということから考えないといけないということですね。
坂本:今、壹岐さんおっしゃってくれたけど、私が作った公式ですけど、
問題 = 「あるべき姿」 ― 現状 なんですよね。
ところが、「あるべき姿」が間違ってませんかという以前に、「あるべき姿」そのものがないということが多いんですよね。
あるべき姿が明確でないとすれば、そもそも今起きているという問題は問題じゃないですか。むしろあるべき姿がないことが最大の問題であるということです。
これもなんか謎解きみたいな感じもしますけども、まずあるべき姿を明確にすることです。そして、例えば、ある人のあるべき姿が、試験で100点満点を取ることだとして、現在60点しか取れなかったとすると、この人の問題というのは100-60だから40点になりますね。では、次に40点を取れるようになるためにどうするかを考えればいいわけです。
1点を上乗せするためには1冊の良書を読むことが必要。あるいは一人の有意義な人脈が必要だとすると、その人は40冊本を読まないといけない。あるいは40人と新たな人脈を作らないかんということになります。これが解決法になるわけです。
今、私言ったのは100-60ですよね。でも現状が40点の場合には、60点が必要になっちゃいますよね。そうすると努力の方向とか、スピードとか量が全然違ってくるわけですね。
個々人もそうだし経営者もそうですけど、あるべき姿と現状が、正しく掴まれていないのに問題論ばかりが多すぎるから、立てている対策が堂々巡りというかね、空回りしちゃうことがあって、現実にそういう会社ってすごく多いと思いますよ。
宮田:目的が定まってないっていうのと、現状を正しく捕まえてないということですね。
壹岐:前年対比いくら増えたとか減ったしか考えてないっていうか。まぁ僕も銀行員だったんで、昔さんざんそれをお客さんに言ってた立場なので、それでお客さんを問い詰めていましたけど・・。それは、銀行の常套手段なんですね。前年対比なぜこんなに減ったんですか。その原因はなんですか。来年はどうなりますか。でね、なぜそんな短期のことにこだわるのかっていったら、それは銀行員がそのお客さんを担当するのが大体2、3年だからですよ。そりゃ自分がいる間のことしか考えないからですよ。その間になにかあったら自分の責任になるからね。
坂本:ここで言っている「あるべき姿」っていうのは、そんなね、1年先2年先の短期のことじゃなくてね、ビジョンと言ってもいいでしょうし、ロマンと言ってもいいかもしれませんけどね。10年先、20年先、50年先どんな会社になろうとか、なりたいというですね、そういう事だと思うんですよ。
ところが、そんな話をすると、「なぜそんな30年も50年もね、先のことまで考えてやらないといけないんですか?」って質問されるんですが、私はね、こう答えるんです。「今年高校を出てあなたの会社に入った方は18歳ですよね。その子たちに、この会社は夢があるのか、将来どうなるかって聞かれたらどうしますか。50年先、その方々はまだ68歳ですよ。これからの時代、70歳まで十分働けるわけですからね。そのときに、50年先のビジョンがあれば、うちの会社って、今は大変だけど、将来こんなことを考えている会社だからもう少し頑張ろうという気持ちになれるじゃないですか」と。
現実は厳しい状況でも、私は夢と希望があれば、社員は組織を捨てないと思います。夢と希望が失われた瞬間、その人は組織を捨てるんですよ。その夢と希望の一つがビジョンですよね。
宮田:前回前々回にもおっしゃってましたけど、お子さんであったりお孫さんであったり、会社がそのご本人がいる時だけじゃなくてずっと続いていくものとして見ていかないと、残ってもいかない・・